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倉持麟太郎
2019.8.30 11:29

第一回:小林よしのり×倉持麟太郎「立憲主義とは何か」おさらい

昨日は、21時からよしりん先生と生放送「立憲主義とは何か」と題して、9条はいったい本来どのような規範で、それがどのように変質していき、それを政治家や国民はどうやって放置(見て見ぬふり!)をしてきたのかということを、1時間で駆け抜けました。

以下、ちょっとしたまとめ

 

①憲法9条は、起草段階でも、

a)マッカーサー三原則のうち「放棄」の対象となった「自己の安全を保持するための手段としての戦争」が起草案には含まれていなかった。
その理由をケーディスは、放棄の対象から自衛のための戦争は除くことにしたためだ、と述べている。
 ➡本当は、自衛戦争の放棄は「国家の自殺」だとして、ケーディスは、1項からこれをはずし、2項以下でこれを留保するつもりだった。しかし、2項も戦力の不保持を明記し、この目的は達成されなかった。

b)帝国議会に政府案が上程。内閣法制局は、議会対策用に「想定問答集」を作成。
 Q:「自衛権は認められるか」
 A:「戦争放棄に関する規定は、直接には自衛権を否定していないが、一切の軍備と国の交戦権を認めていないので、結果において自衛権の発動として、本格的な戦争はできないことになる。

c)芦田修正による「自衛のための武力行使は禁じていない??」

芦田は、生前、9条2項の戦力不保持&交戦権否認にかかる「前項の目的を達するため」という文言の挿入は、侵略戦争のための戦力&交戦権を禁じただけで、自衛のための武力行使を禁じた趣旨ではないなどと話していた。しかも、日記や戦後すぐの秘密議事録に書いてあるから読め!と。

しかし、1986年刊行の『芦田均日記』(1986年)にそうした記述はなく、議事録には

「前項のというのは、実は双方ともに国際平和ということを念願しているということを書きたいけれども、重複するような嫌いがあるから、前項の目的を達するためと書いたので、つまり両方共に日本国民の平和的希求の念慮から出ているのだ、こういう風に持っていくに過ぎなかった」(第90回帝国議会衆議院帝国憲法改正案委員小委員会速記録)

との記録しかない。

重複避けるためだけやんか!!

 

☞ということで、本来は9条は国連中心主義を前提とした完全な武装解除条項で、自衛権の行使としての武力行使すら認めていなかったはず、ということになる。いわんや、自衛隊などという武力組織など・・・

 

②しかし、早くも1950年そこそこに、朝鮮戦争➡警察予備隊➡自衛隊の創設という現実を突きつけられる。ここで、a)9条との重大な齟齬を前に憲法を明文改正して統制する=規範の優越(立憲主義)。b)憲法改正せずに解釈改憲の手法で現状を優先する=現状の優越(非立憲主義)という選択肢が存在した。

政治家も国民も、憲法によって統制するよりも、憲法改正等の政治的コストをどれだけかけずに現状をなし崩し的に認めるb)に舵をきった。このとき、明らかに我々日本政治及び国民は憲法を規範として一度殺した。

③その後、交戦権も戦力も存在しないはずの憲法のもと、その憲法の「外」で、専守防衛=”旧3要件”のもと急迫不正の侵害に対して他に取るべき手段がない場合に必要最小限度の武力行使ができるとした。

ここでは憲法13条を持ち出して「国家は国民の生命や幸福追求の権利を最大限尊重するって書いてあるってことは、座して死を待つわけにはいかないじゃーん!」などとして、自衛権の行使と自衛隊の存在を”何とかした”ために、もはや何でもありである。外れたタガは、一部集団的自衛権の行使まで「解釈」で認められた。そりゃあそうだろう、日本の自衛隊の存在やできることは憲法の「外」にあり、「解釈」でどうにでもなるのだから。

もはや、自衛のための武力行使も認めなかったはずの9条のままで、敵兵力の殺傷や敵基地攻撃、さらにいえば核保有すら憲法上は否定されていない。

交戦権を否定しながら、解釈で「自衛権」を”密輸入”した結果、否定されてるはずのことがすべて自衛の名のもとできてるやん。

安保法制の前までで、安倍政権なんか誕生してなくても、これらすべてできるようになっていたのである。

これが平和主義?立憲主義??

日本の国民、政治家、研究者は、9条の精神や「最高法規」(憲法97条、98条)なんてことはそっちのけで、なんとなく有事のときに守ってくれそうで、専守防衛の名のもとに暴発しなさそうな自衛隊の存在を漫然と追認した。

「自衛隊は軍でなければOK」

いやいや

「軍でないから統制されることのあり得ない法の外の暴力装置」

でしょ。

これが平和主義?立憲主義??

しかしこれまた国内外で自衛隊が当事者となる真の有事が発生していないからこんなことを言っていられるわけで、現在9条のもと歪んだ法体系をもつ我が国では、本当に自衛隊は撃てるか?責任をとれるか?アメリカの戦争にNO!という主権があるか?

本気でこれらのことを突き詰めた場合は、まったくもって法の不備が明らかになる。

これ以上いくとまた長文癖がでそうなので、これくらいにして、あとは動画を是非ご覧ください!

よしりん先生と話しながら、同じ論点をかなり多層的に何周もすることによって、自分の中でも頭が整理されていくのがわかりました。

次回も、こうご期待!

 

倉持麟太郎

慶応義塾⼤学法学部卒業、 中央⼤学法科⼤学院修了 2012年弁護⼠登録 (第⼆東京弁護⼠会)
日本弁護士連合会憲法問題対策本部幹事。東京MX「モーニングクロ ス」レギュラーコメンテーター、。2015年衆議院平和安全法制特別委員会公聴会で参考⼈として意⾒陳述、同年World forum for Democracy (欧州評議会主催)にてSpeakerとして参加。2017年度アメリカ国務省International Visitor Leadership Program(IVLP)招聘、朝日新聞言論サイトWEBRONZAレギュラー執筆等、幅広く活動中。

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